事例:1 失火責任法とは
失火責任法(失火法とも言う)ってよく聞くけどいったい何なんですか?
もし、隣の家が火事になり、その火が延焼して自宅が燃えてしまっても、基本的には火元の隣家から賠償を受けることはできません。(ただし、隣人に重大な過失があったり爆発の場合は、隣家に賠償請求をすることができます)。「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う 」民法709条はこのように規定されております。
しかしながら民法の特別法に下記一文が書かれております。
「民法第七百九条ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」
これが「失火ノ責任ニ関スル法律」、略して「失火責任法」といい、1899年(明治32年)に制定されました。土地が狭く木造家屋が多い日本ならではの法律だといえます。有名な大火では、1976年(昭和51年)、山形県酒田市で起こった大火事「酒田大火」があります。酒田市中心部で発生した火災は、強風にあおられて22.5ヘクタールを焼き尽くし、大きな被害をもたらしました。一軒の火元から延焼し何十軒と延焼してしまった場合とても火元がすべてを賠償することは無理があります。しかしながら重過失により失火した場合は賠償責任が発生すると記載されております。
重過失による失火とは…
- 主婦が台所のガスコンロにてんぷら油の入った鍋をかけ、中火程度にして、台所を離れたため、過熱されたてんぷら油に引火し、火災が発生した例(東京地裁昭和57年3月29日判決 東京地裁判例)。
- これは明らかに火災の発生を予感できます。非常に危険な行為です。
- 石油ストーブに給油する際、石油ストーブの火を消さずに給油したため、石油ストーブの火がこぼれた石油に着火して火災が発生し、隣接の建物等を焼損したことにつき、重過失があったとして不法行為責任が認められた例(東京高裁平成15年8月27日判決 東京高裁判例)
- これも非常識極まりない行為ですね。火災の発生を自ら行っている行為です。
また失火責任法は戸建て住宅の話だけではなく分譲マンションの場合も同じ理屈です。マンションの一室から失火、隣家を燃やした場合も失火責任法が適用されます。
火災保険の比較だけではなく、よくこのような法律問題も頭に入れ火災保険を契約されればいいでしょう。隣家から賠償を受けられると思い火災保険無保険で延焼を受けた場合、相手側に重過失がある場合を除き一切損害賠償金は受けられませんから。
日本では「自分の家は自分で火災保険をつけてしっかり守る」ことが大事ですね。
*なお、失火責任法は「火災」のみ適用で「爆発」は失火責任法適用外です。「爆発」に備え「個人賠償責任保険(特約)」に加入しておくといいでしょう。
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